ルノー4CV …Ⅰ

東京のタクシー料金が改定され、近距離利用に優しいものになった。特に高齢化が進む中で足代わりとして利用している人達には良いことだ。

私ごとで恐縮だが、小学生の頃だったか親父と東京へ出掛けたおり、「タクシーか地下鉄、どっちに乗るか?」と聞かれたことがあった。少し迷ったが、「タクシー」と答えた。クルマが大好きだが乗れる機会がなかなかないと思ったからだ。家にクルマがある風景など考えもしなかった時代である。実はその時に乗ったタクシーが今回ご紹介する『ルノー4CV』だった。定かではないが、初乗り料金が確か60円だった。記憶が正しければ1950年代後半の頃の想い出だ。

日本のタクシーの歴史を辿ると、誕生は大正元年(1912)年、105年も前に『T型フォード』6台から始まったとのことだ。ちなみに平成28(2016)年3月末現在の東京のタクシーは個人、ハイヤーを含め48,096台(東京ハイヤー・タクシー協会HPより)もあるそうだ。

さて、その『ルノー4CV』、日産の「オースチン」いすゞの「ヒルマン」と並ぶ乗用車製造技術習得の為の外国車ノックダウンの代表格である。昭和28(1953)年にノックダウン開始、翌昭和29(1954)年まで6本グリルの本国版1947年~1953年モデルを製造。昭和30(1955)年~昭和32(1957)年前期までは3本グリルの本国版1954~1958年モデルを製造した。このモデルは全長3.8m境の最高速度制限に対応してバンパーを伸ばし、全長を3.845mとした。その後昭和32(1957)年後期からはわが国の道路事情に耐えうるよう足回りを補強、乗心地を改善するなどほぼ国産化を達成した『日野ルノー』が昭和38(1963)年まで製造された。

日本でもタクシーとして大活躍、「神風タクシー」の異名をとった。スマートで軽量、小柄なボディにOHV748cc21psのリヤーエンジン、後輪駆動で機動性に優れた経済的なクルマだった。

ところで、ノックダウン開始の昭和28(1953)年には、当時の首相吉田茂の「バカヤロー」発言で衆議院が解散、有名な話だ。また、わが国初の屋上ビアガーデンが大阪梅田にオープンした年。そして、「君の名は」が大ヒットした年でもある。

これは初期の発行と思われる昭和29(1954)年モデルのカタログからの写真。「特長」として「1.後部エンヂン 2.4輪コイルスプリングに依る独立支持 3.ダブルアクテングテレスコービックショックアブソーバー 4.オイルブレーキ4輪制動 5.燃料消費量 1ガロン 70粁~80粁 6.低部重心と復元装置に依る安定性」を挙げたセピア色のカタログ。「総発売元 日野ルノー販売株式会社」となっているのも時代を感じさせる。

下は昭和35(1960)年発行のカタログからのもの。「日野ルノーは小型乗用車の傑作」のタイトルに「親しめる気軽さ」「堅ろうで経済的」のサブタイトルでまとめ、前述の特長を図解している。クルマと同様、小型ながらカラー版の詳しいものだ。

後に「コンテッサ」を生むに至った、小さいけれど先進の優れものだった。

(敬称略)[2017-12改]

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