「いつまでも　いつまでも　

走れ　走れ　いすゞのトラック」♬♪…

軽快な歌にのせて流れるいすゞのＣＭ。

現代のいすゞにぴったりのイメージだと思うが、実は昔から「トラックのいすゞ」のイメージが強かったと思われる方も多いだろう。

長い歴史の中では、ダットサンの製造権を日本産業（日産の前身）の求めに応じて無償譲渡した事実もあったが…、その前身も含めた歴史を辿ると、実に大正６（１９１７）年には「ＦＩＡＴ乗用車」を分解、スケッチし、試作を始め、大正１１（１９２２）年には「ＷＯＬＳＥＬＥＹ社」との契約による「ＷＯＬＳＥＬＥＹ　９型乗用車」

［いすゞ自動車史より］

を製造している。

さらに戦後、我が国のモータリゼーションの発展を睨

み総合メーカーを目指しての乗用車製造技術の確立に意欲的だった事は意外に思われるかも知れない。

ところで、我が国の戦後の本格的な乗用車製造を目指す道には２つの道があった。

１つは自社開発であり、もう１つは外国車のノックダウンによる技術習得（国策も影響）の道である。

ここにご紹介する『ＩＳＵＺＵ　ＨＩＬＬＭＡＮ　ＭＩＮＸ』は後者であり、日産の「ＡＵＳＴＩＮ」、日野の「ＲＥＮＡＵＬＴ」と並び、ノックダウン車の代表格である。

昭和２８（１９５３）年に英国「ＲＯＯＴＳ　ＭＯＴＯＲＳ社」と技術提携し製造に着手した。

いすゞとしての初代（ＰＨ１０）は「ＧＨ１０」型ガソリンエンジン（水冷側弁１２６５ｃｃ３７．５ｐｓ/４２００ｒｐｍ）搭載の４人乗だったが、子供だった私の眼には、地味ながら本格的乗用車の印象が残っている。

［Ｍｙ　ＳＫＥＴＣＨＢＯＯＫからの「ＰＨ１０」］

「ＨＩＬＬＭＡＮ　ＭＩＮＸ」の名の由来は、もともとの開発者「ＷＩＬＬＩＡＭ　ＨＩＬＬＭＡＮ」からの命名である。

ちなみに、この初代登場の年は、「ＮＨＫ」と「日テレ」が　ＴＶの本放送を開始した年。

また前年には、今でも人気の「お茶づけ海苔」を発売したお茶屋「永谷園」が「株式会社永谷園本舗（現（株）永谷園ホールディングス）」になった年でもあった。

さて、その後初代「ＭＫ　ＶⅠ（ＰＨ１０）」は、翌昭和２９（１９５４）年のＭＣで後部外観などを変更し「ＭＩＮＸ ＶⅡ（ＰＨ１１）」に。

さらに、昭和３０（１９５５）年には「ＧＨ１２」型ガソリンエンジン（水冷頭上弁１３９０ｃｃ４３ｐｓ/４４００ｒｐｍ）搭載５人乗の「ＭＩＮＸ　ＶⅢ（ＰＨ１２）に進化、ハイヤー・タクシーなど営業車としても活躍した。

そして、昭和３１（１９５６）年にはツートーン・カラー

［いすゞ自動車史より］

も登場。

同年秋に２代目（ＰＨ１００）に引き継がれ、翌昭和３２（１９５７）年には国産化第１号車がラインオフするが、

実質的に初代がいすゞの本格的な乗用車製造の出発点であり、いずれ、あの人気車「ベレット」を生むことになる原点だった。

「Ｔｈｅ　Ｎｅｗ　ＨＩＬＬＭＡＮ　ＭＩＮＸ」とされる２代目は、カタログに「すばらしい性能と近代美あふれるスタイル」とある通りのイメージを小学生だった小生も感じていた記憶がある。

特長は「優美なスタイル」、「広々とした室内」、「運転し易い装置」、「すばらしい性能」、「驚くべき安定性」、「優れた経済性」、「柔らかいシート」、「快よい乗心地」とされた。

エンジンは「ＧＨ１００型」水冷頭上弁式１３９０ｃｃ圧縮比７：１で４６㏋/４６００ｒｐｍ９．２５ｋｇ．ｍ/２４００ｒｐｍが搭載されたが、特筆すべきは圧縮比８：１の５１．５㏋/４６００ｒｐｍ９．９ｋｇ．ｍ/２４００ｒｐｍ仕様のエンジンが選べる様になっていたことだ。

トランスミッションは「シンクロメッシュ式」前進４段後進１段で、懸架装置はフロントが「独立懸架コイル」、リヤーは「半楕円７枚板ばね」だった。

ここに「自動車工業会　自動車図書館」で数年前に複写させて頂いた折り畳みタイプのカタログからの画像をご紹介するが、消えかかった文字は小生がなぞってある。

［ピストンを変更することによって４６㏋から５１．５㏋にアップ出来る旨の記載がある］

やまと自動車株式会社は傘下に販売会社を持つ総販売会社だ。

ご覧になって気づかれたと思うが、このカタログは英国版の絵などはそのままに文字のみ国内向けに日本語版にしたもで、オシャレな感じがイメージされる。

まだ見ぬ外国に思いを馳せたことも記憶に新しい。

その後の進化については別途ご紹介する。

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（敬称略）

［２０２３-３］