PRINCE SKYLINE [1st]…Ⅰ

人生金がすべてではないが、いっぱいあればうれしいものだ。

昭和32(1957)年発表の長者番付によると、1位は松下電機社長の松下幸之助、2位が三洋電機社長の井植敏夫だった。このころ、電気洗濯機が10世帯に1台ポータブルラジオが30世帯に1台の普及と発表されている。

神武景気に支えられ、その後の岩戸景気にも引き継がれ、三種の神器と相まって電機メーカーの大躍進が続いていくことになったわけだが、現代の変わりようはすさまじい。

一方、スポーツの話題としては、高校野球春の選抜大会で王貞治(投手)の早実が優勝した。また、歌の世界では、コロンビアローズの「東京のバスガール」が大ヒットしたのが時代を感じさせる想い出だ。

海の向こうの、当時ソ連では人工衛星「スプートニク1号」の打ち上げに成功した。とにかく、ビックリしたものだ。

そんな時代のこの年に、初代『プリンス スカイライン』が誕生した。

メーカーは富士精密[昭和36(1961)年プリンス自工となり、昭和41(1966)年、日産に吸収合併された]で、先進技術が売りの高級志向だった。

歴史をたどれば、立川飛行機と中島飛行機からの発生だ。立川からの東京電気自動車[後に多摩電気自動車、たま自動車(ここからガソリン車に移行)、(旧)プリンス自工となる]は戦後のガソリン統制のため、現代とは目的が違うが、なんと電気自動車(モーターとコントローラーが日立製、バッテリーは湯浅製)の著名なメーカーだった。他方、中島から発生の(旧)富士精密がエンジンメーカーで、この2社の合併で富士精密となった。

初代はGA30型1.5Lエンジンを搭載、バックボーントレータイプのフレームにわが国初のドディオンアクスルを採用した。このアクスルは、高機能だが高価であったため、外国製スポーツカーなどの高級車にしか使われていなかった機構だ。また、デザインは当時アメリカで流行だったジェット機のテールフィンを思わせるものだった。クルマ自体が高根の花だったからこそ、このクルマがいかに高級であったかお分かりいただけるだろう。

ところで、なぜ社名にプリンスが付いたのか?…後にプリンス自動車工業という社名にもなるわけだが、現在の天皇が皇太子になられた昭和27(1952)年の立体指令を記念して、当時の愛車だった旧来のセダンから命名されたそうだ。ちなみに皇太子仕様は『プリンスセダン』の頃から1.9L(通常1.5L)だったと聞いた。皇室専用車『ロイヤル』(開発はプリンス自工、納車時は日産に合併後)に至るまで愛用された、名実ともに正に宮内庁御用達だった。

さて、右のカタログ写真が初代「デラックス」2灯式。

特に女性のスカートが時代を感じさせる。

下は昭和35(1960)年にマイナーチェンジされたものだが、わが国初の4灯式ヘッドライトを採用するなど高級感を増していった。

実は、その前年の昭和34(1959)年に1.9Lエンジンを搭載してさらにグレードアップしたものをプリンスグロリアとして誕生させている。その名は皇太子ご成婚を記念しての命名だ。そして、昭和36(1961)年にはスカイラインにもそのグロリア用エンジンをデチューンした1.9L仕様を追加した。

右の写真は昭和37(1962)年デビューのスポーツで、

当時のプリンス販売キャンペーンチラシに掲載されていたもの。スカイラインのシャシーをベースにミケロッティがデザインしたボディを載せたもので、後の日本車のイタリアンデザイン採用の火付け役だった。価格はクーペ185万円、コンバーチブル195万円(当時クラウンの約2倍)という超高級車だった。また、そのキャンペーンの内容も「特賞スカイラインスポーツ2本」とあり、豪華であった。

後年、極端な技術重視やバランスを欠く車種構成などが結果的に経営不振を招いたようだが、先進的で技術力のあるメーカーが消滅したことは残念の極みだ。

(敬称略)[2017-12改]

PRINCE SKYLINE [1st]…Ⅰ” に対して1件のコメントがあります。

  1. 冨井 誠一 より:

    プリンススカイラインは、1965年普通車運転免許証を取得し、初めて乗り回した車で思い出深いです。
    もちろん自分で購入することは出来ません。
    高校3年生の夏休みに免許を取得し、高校所有の車で、学校の指示により、先生方の中学校訪問に運転手として乗っていた車です。

  2. 冨井 誠一 より:

    メール通知不要

  3. rara斉藤 より:

    本日は、トヨタにて世話になりました。 

    私が出した写真を見て、一発で初代スカイラインと言い当てたのは驚きでした。昭和20年代の小ぶりのアメ車かと思っていました。

    ではでは。

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